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舞台「文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)」を見て

昨年2019年12月29日、舞台「文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)」を見に森ノ宮ピロティホールへ行ってきた。本作品は同年3月に東京・京都とで第一弾が公演された。その際の人気ぶりはすごいもので、舞台の好評ぶりが口コミで広められ、千秋楽公演では立ち見が出るほどだった。

 

▼舞台「文豪とアルケミスト」とは

ゲームアプリ「文豪とアルケミスト」を原作とした舞台作品。プレイヤーにより現在に転生した文豪たちは、侵蝕(しんしょく)された書物の中に潜り込み、文学を守るため、侵蝕者と呼ばれる敵と戦う。侵蝕者たちと戦い続ける日々の中で起こる文豪たちの人間模様を描いた作品である。

 

第2弾となる本作は、志賀直哉武者小路実篤、そして有島武郎の3人、白樺派が大きく取り上げられている。

 

本作品における武者小路実篤はとてもあっけらかんとしたキャラクターだ。武者小路を演じる杉江大志なのか武者小路なのか境界線が全く分からないなと少々の驚きもあった。しかしそれが面白くもあり可笑しくもあり、それはなんとなく武者小路が遺した作品の風合と似てるかもしれない、と思うこともあった。

冒頭の彼の芝居の中には前作の主演であった平野良が演じた太宰治の芝居のオマージュを利かせているところもあるのではないかと思ったところが随所にあり、前作が作り上げたものをスパイスとして取り込んできたのだろうかとかぼんやりと考え、懐かしさを感じつつ、思わずニヤリとさせられてしまった。彼・武者小路実篤が「友情」という作品に描き書いた内容、書き遺した言葉たち、彼自身が抱えていたのかもしれない作品の背景を1つ知ることができる内容であった。

 

文豪もそう呼ばれる前から一人の人間であるということをこの舞台では強く突きつけられる。小説という文学に魅せられ、秀でたものを遺した人たちではあるが、その人たちも読者である私たちと同じように1人の人間であり、友情や愛について思い悩むことだってあったに違いない。友人の死や、離別、それぞれ口に出さずとも思い秘めていたお互いへの想いだってあるだろう。そういう文豪たちの描かれてこなかった人間らしさみたいなところを強く強く打ち出してくるこの作品を見ると、その文豪たちの事をとても身近に感じることができ、よりこの文豪たちの作品を読んでみようかなと思わせられるような内容であった。

 

まっさらな気持ちで見てもよし、文豪について興味があるからでも、キャストが脚本が演出が気になる、などどんな角度からでもいい。是非一度見てほしい。文豪たちの鮮やかで美しく、華やかな世界を覗いてみてほしい。もしかしたら素敵な作品や作家と更に出会えるかもしれない。